ゲームバランスは一日にしてならず

こんにちは、サイとです。

2月20日にBO3戦、2月25日にVtuberグランプリを行い、v112-3環境はそれなりに均衡の取れたゲーム体験を提供できているように思います。

Vtuberグランプリ|運営レポート

長い観察の結果、カードパワーのコストを見直しました。現在のv112-3に更新されたのは2月21日のことです。

【2022.2.12】バージョン112-2に更新します

この記事はゲームバランスについての読み物です。
リキャストリフトをより深く知りたい方や今後の調整が気になる方、さらにはゲーム制作を志す方へ届けばと思います。

コストは目的に応じる

攻撃札の目的

攻撃札はリキャストリフトにおいて、相手を攻め立てる際に最も重要な役割を担う種類のカードで、これなしに相手のライフを削ろうとすると手段はぐっと限られます。

つまり、攻撃札とは相手のライフを削る目的を持つカードです。
コスト見直しを行う前、運営は相手のライフを削る能力を持つカードに「ライフアド」のタグ付けをしました。

相手が攻撃する際、相手はハンドを1軽減するか、ライフを1減らす能力を持つ。

目的別のタグ付け

同じように、『1/ー』のような相手の手札のみ削り、ライフを削る能力を持たないカードに「ハンドアド」のタグ付けをしました。

コスト見直し前まで『1/1』と『1/ー』を同じ《攻撃》と見なしていましたが、そのカードを使ったことで得られるアドバンテージからカードの目的を見直した結果、『1/1』は「ライフアド」、『1/ー』は「ハンドアド」を得る能力だと定義付けできました。

本来ならその能力から得られるアドバンテージを基準に攻撃力のコストを計るべきでした。

特徴付けと偏り

攻撃力のコスト見直しはカードプール全体の基準を見直した結果、生じたものです。
なお、ハンデスは相手の動きを封じる動きで、非常に強力だった過去があります。

妖夢のカードの大半が修正するに至ったのは、それらのカードがすべてハンドアドを得るカードだったためです。

もちろんそれは意図して特徴を付けるために行いましたが、極端に偏らせたのはバランスが良くありませんでした。結果、『1/ー』はすべて『1/0』にナーフされ、現世斬のみハンデス持ちとしました。

v112-2からリキャストタイム[Ⅰ]が無くなった

適正な手札枚数

強さの代償

リトリトのカードにコストはありません。ただし、強いカードほど手札に戻ってくるのが遅くなります。リキャストタイム[Ⅲ]のカードが犠牲にしているものは、そのカードをゲーム中にキャストする機会です。

リトリトにおける1試合中の平均キャスト数は15回ほどで、4~6ターンで決着が付きます。15回キャストできる中で15回すべてが強いカードであれば、かなり強い動きが出来るでしょう。しかし、リキャストタイム[Ⅲ]の同じカードが使える機会は平均3回です。

つまり、強いカードほどゲーム中で使う機会が少なくなるようにバランス調整されています。

手札はコスト、コストは機会

リトリトでは自分のターンに何度でも、手札を伏せ札にすれば展開中のカードをリフトし、手札回収までの道のりを短く出来るので、リキャストタイム[Ⅲ]のカードを使える機会は実際にはもっと多いでしょう。

すなわち、強いカードを繰り返し使おうとする時、手札をコストにする必要があります。手札が増えることは機会が増えることと同義です。

先制した時、山札があるなら2ドローする

手札1枚増のコスト

ゆえに自分の手札枚数を増やす能力を持つカードはそれだけのコストを持ちます。カードを1枚引くコストはリキャストタイム[Ⅱ]相当です。

長らく運営は2枚引くコストを[Ⅲ]相当と考えていました。
しかし、不夜城レミリアが環境に台頭するようになり、何を引いたかではなく、何枚引いたかが重要なケースが多くあることを発見しました。

不夜城レミリア

つまり、同じカードを繰り返し使うデッキです。
何を引いても得られるアドバンテージが一緒なら、2枚引くコストを[Ⅳ]相当に改め、代わりに条件を付けるようにしました。

後攻有利は3ヶ月目

何を引いても同じ動きが約束されているなら、本ゲームは当然ながら後攻有利です。不夜城レミリアが台頭する前の環境では先攻後攻の勝率は、月ごとに先攻後攻で入れ替わりがあったので五分五分でした。

しかし、不夜城レミリアが環境入りし始めた2021年12月頃から3ヶ月連続で後攻の勝率が高い状況になっています。
2022年2月の環境では後攻の勝率は56%です。

このまま後攻有利の環境が拡大していくと、プレイヤーのスキルではなく、後攻を取れなかったから負けだと考える事態になり、プレイヤーは不公平感を抱きます。
もしそうなれば、永夜抄サイクルが終わった時点で何らかのルール改定が必要です。

先攻なら『グレイズチェックを行わない、ー/1』を撃てる

使用率と勝率の偏りを無くす

ファイター別の使用率

下記の円グラフは2022年2月の対戦データを参照にしました。

鈴仙は新ファイターなので使用率が高くて当然です。
また、グレイズ持ちのファイターの使用率が高い環境は初心者が入りやすいと思います。

注目するべきはグレイズを持たないファイターの使用率です。
2月はレミリアと紫がたくさん使われた一ヶ月でした。

ファイターの勝率

下記の円グラフは2022年2月の対戦データを参照にしました。

あえて並び順は使用率と同じにしています。
明らかに勝率が低いファイターもいれば、勝率が高すぎるファイターもいます。

なぜそれが分かるかというと、使用率に対し50%以上の勝率を上げているものはパイが大きくなり、その逆はパイが小さくなるからです。

ファイター別の勝率

そのファイターごとの勝率は「勝数÷使用数×100」です。
2022年2月の対戦データを元に、勝率が高い順に発表します。

1位:美鈴(71%)
2位:レミリア(66%)
3位:妖夢(64%)
4位:ルーミア(63%)
5位:咲夜(59%)
6位:チルノ、紫、萃香(56%)
9位:霊夢、幽々子(50%)
11位:鈴仙(49%)
12位:魔理沙(42%)
13位:パチュリー、アリス(38%)
15位:フラン(9%)

使用数が低いと極端な数字が出やすいので、美鈴1位は数字のマジックだと思います。
なお、レミリアが勝率66%を叩き出しているのはギリギリ健全という判断です。

リトリトでは50%を中央として、20%以内の差に収まるように環境の調整をしています。
なのでそれ以上の%になっているのは何か別の理由です。

今回のフラン勝率9%は手札を増やす行動のコストが重くなったので、フランの固有能力「手中の目」を活かしづらいカードプールになったのが一因だと考えられます。
また、初心者プレイヤーの対戦や新デッキ開発の研究としての対戦が多くあったことも原因の一つでしょう。

勝率は使用率に影響する

当然ながらどのプレイヤーも勝つためにファイターを選びます。
明らかに弱いファイターがいた場合、そのファイターは選ばれなくなり、明らかに強いファイターがいた場合、そのファイターを必ず選ぶようになってしまいます。

カードテキストの調整は勝率を安定させ、できるだけ均等にファイターを選択する自由をプレイヤーに感じてもらうための必要な処置です。

つまり、強弱の差をできるだけ縮めることによって勝率を調整し、使用率の調整へと繋げています。
カードテキストの調整をしてから、実際に結果が分かるまで少なくとも2ヶ月は掛かるのです。

環境の変遷

メタゲームを制せよ

環境と言うほど対戦データは多くありません。しかし、そのバージョンでの最適解が何かという議論は常に行われています。そして、最適解が分からない環境こそが素晴らしいメタゲームを作っていると考えています。

それでもよく使われるデッキが登場し、自ずとそれが最適解であるかのように振る舞うのが環境です。だからこそリトリトには定期的な大会があります。

2月25日開催のVtuberグランプリはその意味で非常に興味深い結果を出しました。
不夜城レミリア環境に必滅バーンが一石を投じたのです。

Vtuberグランプリ|運営レポート

健全な環境の結論デッキはミッドレンジ化する

様々なデッキタイプが使える健全な環境だと自ずと結論デッキはミッドレンジ化します。なぜなら、受け幅を広く取った方が負けにくいからです。

不夜城レミリアはコントロール寄りのコンボデッキでしたが、最新の環境では不夜城コンボを搭載したミッドレンジデッキになりました。Teir1だから結論デッキではありません。それでも勝率は66%なのです。

たまに、ジャンクフード

大会に参加するならば、当然ながらどんなプレイヤーも出来る限り勝率100%を目指して戦います。しかし、健全な環境のミッドレンジは勝率が上がりにくく、勝ったり負けたりするデッキです。そうした環境は素晴らしいですが、飽きが来ます。

普段はバランスをよく調整したヘルシーな料理で良いですが、たまにはジャンクフードを食べたくなるように、運営はぶっ壊れカードだと分かった上で更新することがあります。アグロやOTKがTier1になるようにしたり、グレイズ無しデッキが戦えるようにしたりするためです。

大抵は後で調整する形になります。しかし、運営も含めてぶっ壊れカードをスルーしてしまうと、後になって環境を支配するトンデモデッキが生まれるのには注意です。


本記事はここまでとします。
良かったらこの記事やVtuberグランプリ、『東方リキャストリフトV112-3』について、あなたの意見を聞かせてほしいです。
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では、いつかまた開発秘話でお会いしましょう。

それまで待てないという方は、ゲームを作ったきっかけを話した配信(2:40:00頃)をご視聴ください。

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